Offering the homemade taste of Grandma Toki

Grandma Toki’s food items, produced in a unique way using fresh bonito and tuna obtained in Kesennuma, are mild and savory. People who eat them feel a sense of home and comfort.

Taste and materials

Grandma Toki’s food items are produced with a desire to have people recall the rustic and simple flavors of home cooking of ages past.

Taste and materials

Equipment

Each product is carefully made by hand by the staff with equipment installed at the company’s own factory.

Equipment

仕事人

信じた味は、
あの懐かしい味。

マルチ村上商店 代表 村上祐一

東京へ出て見つけた。
自分の居場所、気仙沼

気仙沼の松崎前浜にあるマルチ村上商店を訪ねると、専務取締役の村上祐一さんが笑顔で迎えてくれた。社長を勤める父は、今は見守る立場。実質、現場を仕切っているのは村上さんだ。事務・経理を担当する奥さんと二人三脚で会社を引っ張っている。
気仙沼に生まれた村上さんは、高校を卒業すると、地元を離れた。両親が「好きなことをやりなさい」と言ってくれ、意気揚々と東京へ。人生の1ページとしていろいろなことを経験したが、東京での時間は「今思えば、自分が将来何をすべきなのかを考えるいい時間でした」と村上さんは振り返る。あるとき、東京在住の叔父に会い、胸の内にある人生設計を告げると、返ってきたのは「同じ苦労をするなら、家で苦労しなさい」という言葉。そのひと言で心の中の迷いやモヤモヤがすーっと消え、気仙沼へ戻る決意を固めた。21歳の春だった。
気仙沼へ戻り、家業を手伝い始めると、ああ自分の居場所はやっぱりここだったんだなと実感できて、うれしかった。しかしながら当時はまだ数人規模の小さな会社で、魚の収穫時期だけ稼働する〝季節の仕事〞でもあったため、1年の半分は土木工場で汗を流す日々。それでも、毎日がすごく楽しくて充実していたという。
仕事上の苦労はもちろんいろいろとあったものの、会社は成長を続け、「トキばぁちゃんの手づくりお惣菜シリーズ」が生まれ、やがて看板商品となる。

母が認めてくれたなら
きっとみんなに喜ばれる

震災の後、会社の復興を目指すなかで、ふと村上さんの頭の中に思い浮かんだ味。それが「母がつくってくれた弁当の味つけ」だった。毎日食べても飽きることのないあの懐かしい味。気仙沼らしい、手づくりのお惣菜。
それから、試行錯誤が始まった。「完成したらびっくりさせてあげようと思ってね」。お母さんにはナイショで商品開発を続けたという。「トキばぁちゃんの…」という名前も、もちろんナイショで進めていたものだ。
いよいよ商品が地元のスーパーに並ぶ運びとなり、お母さんが店頭で目にする前に報告を。
…の前に、神奈川に住む妹さんの意見が聞きたくなり、今度こんな商品つくったよ、と電話で報告。すると即座に、「いいじゃない!」という明るい声が返ってきた。その翌日、お母さんに報告に行くと、どうやら先に妹さんから連絡があったらしく、お母さんは顔をほころばせていた。「売れて、私のところに取材とかきたらどうしましょ」。晴れて、母公認の商品となった瞬間だった。

家族の絆。家族の団らん。
そしてトキばぁちゃんの味

1階の工場では、いい香りに包まれて、社員の皆さんが働いていた。窓から美しい海を見渡す2階に上がった事務所では、村上さんと奥さんが机を並べる。公私ともに支え合う、仲睦まじいご夫妻。
教員の長男と大学生の次男の2人が親元を離れて埼玉に住んでいて、現在は、社長であるお父さんとお母さん、そして村上さんご夫妻、4人での生活。自宅では、お父さんと、毎晩お酒を飲むのを楽しみにしているという。先日、長男が初めての給料で贈ってくれたワインも、一緒に味わった。そのときのワインの味は、もちろん、「格別です。最高においしかった」。
でもおいしかったのは、ワインだけではなかったんだと思う。ワインのそばにはきっと、トキばぁちゃん手づくりの、あの懐かしいお惣菜が並んでいたに違いないから。