気仙沼鹿折加工協同組合

おいしさは、人間味。

気仙沼に毎日とどくとびきり新鮮な海の幸を、職人たちが手と目と技で磨き上げる。それが“三陸の厨房”こと、気仙沼鹿折加工協同組合。
どんな人が、どんな思いを込めて、おいしさをつくっているのか。話を聞きたくなり、組合各社さんを訪ねてみて、
おいしさの秘密はレシピだけではないことを知った。そこには、「人間味」という極上のスパイスが隠されていました。

【仕事人1】株式会社あかふさ食品 赤坂知政
【仕事人2】株式会社かわむら 藤代敬
【仕事人3】カナエフーズ株式会社 小野寺孝二
【仕事人4】マルトヨ食品株式会社 清水徹二
【仕事人5】有限会社高長商店 高橋千尋
【仕事人6】有限会社ヤマグン 髙橋哲朗
【仕事人7】福寿水産株式会社 臼井祐介
【仕事人8】株式会社一番 畠山寿典
【仕事人09】畠和水産株式会社 畠山和貴
【仕事人10】マルチ村上商店 村上祐一
【仕事人11】株式会社ミヤカン 寺田正志
【仕事人12】株式会社ムラタ 村田真
【仕事人13】有限会社カネエイ阿部商 阿部道康
【仕事人14】株式会社冷水 菅原富夫
【仕事人15】株式加和喜フーズ 菅原一夫
【仕事人16】株式会社カネシメイチ 小山修二
【仕事人17】気仙沼ほてい株式会社製造部 尾形健彦
【仕事人18】株式ヤヨイサンフーズ 小野寺端樹
子供たちが待ち望んだ
あの味の復活

 なんだか懐かしい味がする。ひとくち食べた瞬間にそう感じた。子供の頃から食べ慣れてきた大好きな味…。
 それもそのはず、なのかもしれない。かれこれ30年以上にわたって全国の学校給食用としても親しまれている、株式会社ヤヨイサンフーズの「さばの味噌煮」。それは、現在の小学生たちとその親の世代の、親子二代を育ててくれた味なのだ。
 本社を訪れると、生産本部気仙沼松川工場長と総務課長を兼務する小野寺瑞樹さんに、2階へと案内された。
 階段を上り終え、さてオフィスへという踊り場で、思わず足が止まった。そこで目にしたのは、壁に飾られた、全国の小学生たちからの集合写真や寄せ書き。おいしさへの感謝の言葉や、元気に卒業しますという報告などのほか、震災のあとに愛知県の小学校から届いた励ましの文面や集合写真もある。「震災のときには会社へたくさんの激励やお見舞いの言葉を、全国の子供たちからいただいたんです」と小野寺さん。「工場は被災してしまいましたが、なんとしてもその声に応えたくて…」と、今の場所を借り、わずか1ラインながら製造ラインを確保し、みんなが待ち望んださばの味噌煮を復活させたという。

苦労も喜びも学んだ
九州への単身赴任

 小野寺さんは、生まれも育ちも気仙沼。高校時代は自転車部に所属し、ロードレースで活躍。県大会3位になり、東北選抜の一員として全国大会に出場した経験を持つ。自転車からバイクへとかたちは変えても、今なお二輪車が大好きで、時間があれば風を切って走るアウトドア派である。
 気仙沼生活一筋の小野寺さんだったが、2010年に福岡県大牟田市の九州工場へ赴任する。家族を残しての単身赴任。
 そこでは、いい意味で「カルチャーショックの連続でした」と小野寺さんは笑う。まずはいきなり言葉の壁。「地方独特のイントネーションが理解できるようになるまで大変でした」。生活習慣や文化の違い、よく食べる魚が違うことにも驚いたという。
 小野寺さんが着任してから、会社が音頭をとって年に1度、大牟田市で「さんま祭り」を開催している。気仙沼から3000尾もの新鮮なサンマを届けて、地元の人たちに振る舞う催し。「学校給食だけでなく、こんなかたちでもたくさんの人と交流がはかれ、喜んでもらえるのは幸せな仕事です」と語る小野寺さん。心からの笑顔だった。

東北人の強い心で
頑張らなきゃ、ね

 震災の辛い知らせは九州で聞いた。気仙沼のことがとても心配だったが、工場が被災したことで、多くの社員を九州工場に迎え入れ一緒に頑張りとおした。震災後も気仙沼の住所は変えず、復興のためにと地元へ納税を続けた。
 小野寺さんは、九州の赴任で感じたことがあった。それは、九州男児と東北男児の違い。赴くまでは、世間一般で言われるように「九州男児は気性が荒い」というイメージだったが、行ってみて「いいや、それは東北男児のほう」と思った。乱暴者ということではもちろんなく、内に秘めている気持ちの激しさ。それはきっと東北人の方が強い。あの震災を経て、復興への道をたどる今、あらためて実感した。もしかするとそれは、震災を乗り越えて頑張っている、仲間や自分に対して言い聞かせている心の言葉なのかもしれない。
 頑張らなきゃと思うとき、それは今。「工場が復活するまで、きっと毎日そう答えます」という小野寺さん。応援しています。全国の子供たちとともに。

(聞き手:コピーライター 安倍史人)

Copyright©2014 shishiori all rights reserved.